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腸内細菌バランスが崩れると、免疫力バランスも崩れ、様々な病気を誘発する |
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私たちヒトの腸管、小腸から大腸に重さ1.0〜1.5Kg、その種類は500種類以上、その数は100兆個にもおよぶ腸内細菌(腸内フローラともよばれます)が共生していると言われています。
その腸内細菌は、健康な人であれば、善玉菌20%〜30%、悪玉菌10%のバランスになっており、残りの60%〜70%は「日和見菌」といって、良い働きも悪い働きもする菌種です。
その腸内細菌は、腸管からの栄養吸収、腸の免疫、病原体の感染の予防などに重要な働きをしています。
一方、遺伝的な要因、食事などを含む生活習慣、ウィルスやカビなど病原体の侵入、抗生物質の多用など種々の医療的処置などによって、腸内細菌のバランスが乱れると、クローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする、炎症性腸疾患などの原因となることが分かっています。
しかし近年、腸内細菌のバランスの乱れが、腸管以外の全身にも悪影響をおよぼし、肥満、糖尿病、花粉症、アトピー、喘息などのアレルギー疾患さえも生じさせることが知られるようになり、大きな注目を浴びています。
それは、「人間を病気から守る免疫細胞の7割は腸に集まっている」(筑波大学医学医療系・渋谷彰教授)と言うことから、腸内細菌が腸に住み着くことが刺激になって免疫力を育てるとともに、免疫の働きを助けていると考えられており、腸内細菌のバランスの崩れが、免疫力のバランスの崩れを誘い、免疫力低下を引き起こし、様々な病気を誘発させるからでしょう。
資料:腸内細菌のバランスの乱れが、喘息を悪化させるメカニズムを解明 〜新しい発想のアレルギー治療へ〜
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下記の記事は、日本経済新聞の2014/3/16付電子版「腸内細菌バランス大切に 抗生物質や食習慣で乱れ 病気との関係、解明進む(編集委員 小玉祥司)からの転載です。
健康の維持に大切な役割を果たしていると考えられる腸内細菌。人間の腸には約1千種類も存在し、腸内細菌のバランスの乱れとアレルギーなどの病気との関係もはっきりしてきた。一方で遺伝子解析技術の進展などから従来の善玉菌や悪玉菌といった分け方の枠に収まらない性質も見え始めている。食生活の乱れや抗生物質の使いすぎなどでバランスを乱さないことが大切だ。
「抗生物質で腸内細菌のバランスが崩れると、ぜんそくが悪化する仕組みを動物実験で明らかにできた」。筑波大学医学医療系の渋谷彰教授はこう話す。マウスに抗生物質を与えると乳酸菌などが減る一方でカビの一種であるカンジダ菌が異常に増殖。通常は無害なカンジダ菌が作り出す物質が血液を通じて大量に肺に達し、ぜんそくがひどくなった。抗生物質の種類によって異なるが、最も多い場合は2週間で腸内のカンジダ菌が通常の100万倍に増えた。
刺激で育つ免疫力
腸は口から入る食物などを介して直接、体外に通じていて、病原菌の攻撃にもさらされやすい。「人間を病気から守る免疫細胞の7割は腸に集まっている」(渋谷教授)。腸内細菌が腸に住み着くことが刺激になって免疫力を育てるとともに、免疫の働きを助けていると考えられている。抗生物質は感染症の治療には有効だが、使いすぎると関係のない腸内細菌を殺す影響でバランスが崩れる危険もあるわけだ。
腸内細菌のバランスを崩す原因は、抗生物質の投薬など医療行為だけではない。食習慣やストレスなど生活習慣からの影響も大きい。厚生労働省の健康情報サイト「e―ヘルスネット」でもこうした影響を指摘、腸内細菌のバランスを保つことが健康に大切と訴える。腸内細菌研究の草分けとして知られる光岡知足東京大学名誉教授は、著書でビフィズス菌などの善玉菌を多く含むヨーグルトなどの乳製品や納豆などの発酵食品、また善玉菌の働きをよくすると考えられている食物繊維やオリゴ糖を多く含む食品をとることが効果的としている。
さらに「乳幼児期にどれだけ多くの細菌に接しているかも大切と分かってきた」(渋谷教授)。腸内細菌は母親の胎内にいる間は存在せず、生まれた後に口にする食べ物などを通じて体内に入り、腸に定着する。出生直後の乳児は20〜30種類の腸内細菌しかないが、離乳食を食べ始める2歳頃になると急速に増えて大人に近くなり、その後は15〜20歳頃までなだらかに種類が増える。急増する時期に清潔すぎる環境に置くと腸内細菌の種類が十分に増えず、大人になってからもバランスが悪いままになる危険性がある。幼児期に屋外で土を触って遊んだり、おもちゃをしゃぶったりする経験は大切だ。
悪玉菌にも役割
遺伝子解析技術の向上で、これまで一部しか分かっていなかった腸内細菌の種類や働きの解明も進展した。善玉菌や悪玉菌の役割についても、これまでの常識にとどまらない発見がされている。
例えばこれまで悪玉菌とされてきたクロストリジウム属菌は、免疫が働きすぎないようにするT細胞を制御する大切な役割をしている。しかも単一の腸内細菌ではなく17種類の細菌が協力してはじめて力を発揮する。理化学研究所と共同でこの働きを見つけた東京大学オーミクス情報センター長の服部正平教授は「腸内細菌が個別の働きではなく集団になることで役割を果たしている」と説明する。
善玉菌の代表とされるビフィズス菌についても不思議なことが分かってきた。理由は未解明だが、日本人の腸にいるビフィズス菌は欧米や中国など海外に比べておよそ10倍と突出して多いのだ。
ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー、糖尿病といった生活習慣病など腸内細菌のバランスの乱れが影響していると考えられる病気は少なくない。安倍晋三首相が最初の在任時に退く原因となった潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患もそうだ。
病気によって腸内細菌の構成パターンに特徴があることも分かってきた。例えば糖尿病患者の腸内細菌の構成は、健康な人の腸内細菌とは異なる共通の特徴を持っている。腸とは無縁に見える自閉症などにも特有のパターンが見つかるという。「我々が思っている以上に様々な病気に関係している可能性がある」と服部教授は指摘する。
こうした研究が進めば、将来、腸内細菌のパターンを調べることで病気になる危険性を診断できる可能性もある。病気治療に腸内細菌の力を生かそうという研究も始まっており、健康増進にとどまらない活用が期待できそうだ。
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