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虫垂は腸に免疫細胞を供給、虫垂むやみに取らないで、腸内細菌のバランスを保つために |
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盲腸と虫垂を同じものだと思っている人が多くいます。盲腸炎と言うのは古い言い方で、最近は虫垂炎というのが正しいと思っていませんか? 当然、盲腸炎と虫垂炎は異なるものです。
盲腸は小腸と大腸の境目にあり、盲腸の先端にぶら下がるようにくっついている袋状の突起、これが虫垂です。長さは5〜10cmで、直径は1pにも満たない小さな臓器です。
さて進化の過程で、盲腸そのものを退化させてしまった動物さえ多くいるのに、わずかの痕跡程度ですが、まかり間違えば命さえ危ない「虫垂」が、人の体に何故残っているのでしょう。
それはこれまでの研究で知られている通り、免疫の役割が虫垂にあるからです。腸の内壁は極めて薄く養分を吸収しやすい分、異物や細菌にも侵入されやすく、そのために腸の各所に免疫細胞を配置させておく必要から、特に虫垂にその免疫力の任を集中させました。
このように、この小さな虫垂は、大切な働きをしています。虫垂は非常に発達したリンパ組織を持っており、腸内の免疫機能をコントロールしています。
私たちの腸の中には、およそ300種類の腸内細菌が100兆個以上いるといわれていますが、これらの細菌は、互いにバランスを取りながら、腸内の抵抗力を高めたり、消化吸収を助けるなどの役割を果たしています。しかし、腸内細菌のバランスが崩れることもあり、ここで、虫垂のリンパ組織は、バランスを崩そうとしている細菌をすぐさま察知し、白血球を使って攻撃を行います。虫垂は、こうして、腸内の免疫機能を維持しています。
にもかかわらず、これまで、虫垂炎の手術で虫垂をとってしまっても、それで体が弱くなるという事はなく、虫垂が免疫力の機能はあるものの、現代医学はそれを上回る機能を持っている(?)ことから、現代では特に必要としないものとして軽んじて来ました。
しかしここへきて、新たな研究の結果、免疫力を保ち、腸内細菌のバランスを保つ上でも、虫垂をむやみに取らないように、阪大の研究チームが提言しています。
下記の記事は、日本経済新聞の2014/4/11付朝刊「虫垂むやみに取らないで」「腸内細菌のバランス保つ」「 阪大など、治療に応用期待」と言う記事の転載です。
体に必要ない組織と考えられていた虫垂が腸に免疫細胞を供給し腸内細菌のバランスを保っていることを大阪大などのチームがマウスで明らかにし、10日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に発表した。
チームの竹田潔大阪大教授(免疫学)は「バランスが悪くなると食中毒も起こしやすい。虫垂をむやみに取らない方がよい」と話す。腸内細菌のバランスが崩れて発症する潰瘍性大腸炎やクローン病の新しい治療法開発も期待される。
虫垂は盲腸の端から伸びる細長い組織。体内に侵入した病原体などを攻撃する免疫細胞を作る働きを持つ。だが虫垂炎を起こすことがあり、他の病気の開腹手術の際、大きな影響が出ないとして切除されることがある。
チームは虫垂を切除したマウスと、していないマウスを比較。切除したマウスの大腸内では、腸内細菌のバランス維持を担う抗体を作る免疫細胞が半分になっており、バランスも崩れていた。虫垂でできた免疫細胞が大腸と小腸に移動していることも確かめており、虫垂が腸内細菌のバランスを保つのに役立っていることが分かった。
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