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かぜと免疫力 |
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No8、かぜと免疫力、解熱剤と抗生物質は必要か? Ree
かぜについて、最近、いろいろなことが分かってきました。かぜウイルス、特にインフルエンザ・ウイルスは、高温に弱く、たとえば、体温が37℃になると時間単位、38℃になると分単位、39℃になると秒単位で不活化します。体を冷やすと風邪を引くとか、冬にかぜがはやるなどは、かぜウイルスの低温嗜好性によるためだったのです。生体はそのことを進化の途上で学習していて、発熱させていると考えられます。また、発熱により、インタ−フェロン産生の増加やマクロファ−ジが活性化し、免疫力を増強することが別途に確かめられています。
このように、発熱は生体にとって重要なことで、ありがたいことといえます。熱が出るかぜの方が、熱の出ないかぜより治りが早いことは、日常経験するところです。
以上のことから、かぜのときの発熱には解熱剤は原則として禁忌といえます。38℃以上の高熱では解熱剤を使用すべきという従来からの説には理論的根拠が見出せません。
このことは動物実験によっても確かめられています。このようなときに解熱剤を使うと、ウイルスが活性化して、肝・リンパ節・脳などで異常に増殖することが観察されています。つまり、発熱によってせっかく死にかけたウイルスが解熱によりみな生き返り、より異常に増殖すると考えられるのです。逆に、かぜのときの高熱は、それほどまでに強いウイルス感染を受けたと理解すべきでしょう。もちろん全身状態を考慮しながらも、解熱剤の使用は極力さけるべきであると考えられます。
最近、致死率30〜50%のインフルエンザ脳炎・脳症が議論されていますが、これは解熱剤使用によるライ症候群と考えられ、解熱剤を使用しなければこのような不幸は多くは避けられたものと思われます。これまで、アスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸がライ症候群の原因とされ、わが国ではアセトアミノフェンの使用が勧められていますが、アセトアミノフェンも解熱作用が弱いだけであり、英国では問題視されています。これも避けるべきでしょう。
とくに小さな子供さんを抱える母親は熱が出ると大変心配になります。しかし、私の臨床経験からいえば、いままで解熱剤を使わないで問題を起こしたケ−スは1例もありません。それどころか、多くは2、3日でかぜがきれいに治ってしまいます。これは発熱によりウイルスがみな死んでしまうためと考えられます。一方、解熱剤を使うとウイルスが死なず、かぜはいつまでも治らないのです。
多くは高熱でも意外に元気にしていますし、少々ぐったりしたようにみえる子供さんでも、解熱剤を使わないで頑張りきれることがほとんどです。ですから、私は、親御さんによく話をして、解熱剤を使わないで頑張り抜くという方法をお奨めしています。やはり忍耐、とくに親御さんの忍耐が重要のようです。
高熱による引きつけも問題ですが、これには抗痙攣剤(ジアゼパム)が有効ですし、高熱が出そうなときにこれを予防的に投与することを、私は日常的に行っています。いずれにせよ、高熱そのものにより脳がダメ−ジを受けることはまず考えにくく、そのような場合はウイルスの毒力が生体の免疫力を上まったケ−ス、すなわち、ウイルス性脳炎・髄膜炎などの稀なケ−スで、高熱そのものの結果とは考えにくいのです。
一方、免疫力の弱い高齢者では、もともと高熱がでることは稀で、高熱による問題は起きにくいのですが、このようなケ−スでは、積極的に抗ウイルス剤を使用すべきでしょう。また、最近はインフルエンザの診断が簡単に行えますので、これも積極的に利用すべきでしょう。
従来、鼻汁には抗ヒスタミン剤、せきには咳止め、たんには去たん剤を使用することが普通でしたが、考えてみればこれらはすべて「対症療法」であり、かぜそのものを治そうとするものでないことは明らかです。それどころか、このような反応は生体にとって有利であり、長い間の進化の過程で学習した貴重な知恵と考えられるのです。
現代人は、特に欧米人で顕著ですが、我慢することが苦手で、その結果、このような治療法が一般化したものと思われます。しかし、このことは深く考え直す必要があります。このような治療はできる限り控えて、本来の生体の知恵に従うべきでしょう。
また、かぜに抗生物質を使うのもこれまでに一般的でしたが、私の臨床の実際から、初期の段階から抗生物質が必要となるケ−スはほとんどないといえます。また、混合感染が明らかになった時点で抗生物質を使用して手遅れになったケ−スはありません。それよりも、抗生物質により腸内細菌が死滅して酵素産生が破綻し、免疫力が低下することの方が大問題といえましょう。私の永年の経験では、かぜで抗生物質が必要となるケ−スは稀でした。これもできる限り控えるべきでしょう。
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