リンクフリー
|
|
|
|
新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)前夜 |
|
08年4月16日の日本経済新聞の朝刊を見ると、韓国で病原性の強い鳥インフルエンザ(H5N1型)の被害が、20箇所で確認、韓国全土に広がっていると報道されています。 ついこの間までは、インドネシアやベトナムなどでも広がっていました。 感染経路は不明ですが、渡り鳥の飛来時期ではないことから、ベトナムや中国など鳥インフルエンザ感染国との人の往来が一因と見られています。
おりしも、日本では、4月16日、厚生労働省による専門家会議を開き、発生が懸念されている新型インフルエンザ対策、感染拡大を防止する切り札とされるワクチンの活用策について本格検討に入る模様です。
カモなどの野鳥を宿主とする鳥インフルエンザウィルスは、ニワトリや豚などに感染を繰り返しながら変異し、あるときを境目に人へも感染します。この鳥インフルエンザウィルスが、人から人へと感染しやすくなったとき、新型インフルエンザウィルスへと変化します。
新型インフルエンザに変異する危険性が最も高いとされるウィルスのひとつがH5N1型です。このウィルスは、1997年香港で18人が感染、6人が死亡、その死亡率の高さから世界中に大きな衝撃を与えました。その後世界保健機構(WHO)の集計によると、2008年1月21日現在、世界で358人が発症、219人が死亡したとされますが、発展途上国など症例の把握漏れの統計などを考量したとき、慄然とする思いです。
現在のH5N1型はまれに人間に感染することはありますが、まだ鳥インフルエンザウィルスの段階で、人から人へと広がる新型インフルエンザウィルスには変異していないと見ています。しかし世界の多くの学者や専門家は、H5N1型鳥インフルエンザウィルスが、いつ新型インフルエンザウィルスへと変異してもおかしくなく、「パンデミック(世界的大流行)」のカウントダウンがすでに始まっていると警鐘を鳴らしています。
人類がこのような脅威にさらされるのは初めてではありません。20世紀だけでも3回経験しています。中でも、1918年から流行し、世界で4千万人を超える死者を出したスペイン風邪は有名です。ほかに1957年にアジア風邪、1968年には香港風邪が大流行しました。実は、これらはいずれも鳥インフルエンザウィルスが変異してもたらされた「新型ウィルス」でした。
H5N1型は、過去の「新型」と比べても極めて毒性が強く、ひとたび人から人への感染が発生すれば、未曾有の世界的な被害を引き起こす可能性が高いものです。 このウィルスの特徴は、感染力が極めて高くあっという間に世界中に広まる要素を持ち、発症すると免疫の異常反応を引き起こし、全身の臓器の機能不全を招き死に至らしめるというものです。
そこで今回、厚生労働省による本格検討で考えられているのが、@医療従事者や検疫官などへのワクチンの事前接種、A備蓄量の拡大、B新型インフルエンザ発生後のワクチン製造体制の整備の3本柱です。
H5N1型に対する「プレパンデミック(世界的大流行前)ワクチン」は、日本ではすでに、中国やインドネシア、ベトナムで採取したウィルスをもとに2千万人分を備蓄済みです。医療従事者や検疫官などへのワクチンの事前接種を踏まえ、安全性などに問題がなければ、来年度以降は事前接種を1千万人に増やし、備蓄量も3千万人分に増やすことを検討するそうです。
しかし、鳥インフルエンザウィルスH5N1型に対応して作られた、プレパンデミック・ワクチンが、変異した新型インフルエンザウィルスに確実に効くとは今の段階では、誰も証明・断言できないのが実情です。 実際に発生した新型インフルエンザのウィルスをもとに作る、パンデミック・ワクチンならより高い効果が期待できることから、日本政府は、発生時にはこちらのワクチンを国民全員に接種する考えだといいます。 もっとも、パンデミック・ワクチンの製造は、はやくても、新型ウィルスの発生から1年半後になる見通しだといいます。
秋田大学、オーストリア科学アカデミー分子生物学研究所、香港大学などの共同チームは、新型インフルエンザが発生した際に危惧される、重症呼吸不全が起きる仕組みの一因を突き止めた模様です(4月18日付の米科学誌セル・電子版に掲載)。
肺に感染すると、体を守る免疫機構が暴走することを、動物実験で確認したといいます。発症すると、重症呼吸不全を引き起こすため、新型インフルエンザは極めて致死率が高いと見られることから、感染後でも、免疫の働きを和らげる治療法などが開発できれば患者救命につながると見ています。
いかなる場合でも、備えあれば憂いなしです。 健康において、常に、免疫のバランスを保つことは、備えの基礎の基礎となることでしょう。 |
|
|
|