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ガン細胞は恐ろしい敵か? |
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No2、ガン細胞は敵か! 森田 文雄
前回、恐ろしい"ガン細胞"も、実は"自分自身の細胞"であることをご紹介しました。
ヒトの身体は、約50〜60兆個の細胞から出来ていると云われています。さらに、その細胞の設計図は、約30億文字の暗号からなるDNAという遺伝子に書き込まれていることが明らかにされました。
考えてみると気の遠くなる数字ですネ。でも、ヒトは生まれてくるとき(正確には母体の中で受精した1個の細胞から)、個々人に特有のDNA(約30億文字の遺伝子)を持ち、全く同じDNAを正確にコピーした細胞を増やして"ひとりの身体"を造っているのです。 1個の受精卵→1個人(約60兆個 x約30億文字)。 実に、驚異的な生命現象ではないでしょうか。まさに、約60兆個の細胞のすべてが正確にコピーされたDNAを維持しているのが、健全な状態なのです。
さらに、60兆個の細胞にはそれぞれの寿命が来て、新しい細胞に日々更新していく必要があるわけです。皮膚の垢のように、毎日更新されていく様子がひと目で分る細胞もあります。また、胃腸をはじめとする消化管の粘膜も毎日更新されていますし、血液中にある白血球等の細胞も短いライフサイクルで更新されています。 すなわち、ヒトは生まれてから、死ぬまで"自身の細胞を正確にコピー"し続けなければならないのです。
一方、"遺伝情報の正確なコピー"を妨げるものが体外のみならず体内にも存在します。紫外線やフリーラジカル(体内に生じた活性酸素等)がよく知られています。これらの因子によってコピー中の遺伝子が傷害されると、暗号が読み替えられたり、一部が欠損したりします。30億文字のなかには、意味のない暗号や間違えても影響のない部分もありますが、細胞の増殖や制御に関する部分に突然変異が生じると正常の増殖機能が制御されず、異常な増殖が生じます。
特に大切なのは、細胞に対する"増殖"の命令と"増殖完了"の命令なのです。遺伝子研究の権威、東京大学の中村祐輔先生の著書(「遺伝子で診断する」
PHP新書)から少しご紹介しましょう。"細胞が増えるようにする遺伝子、あるいは、増えるのを抑えるように作用する遺伝子のスイッチを、ONにするかOFFにするかによって定められているのです。---
中略
---したがって、このプログラムに重要な影響のある遺伝子に異常が生ずると誤った指令が出ることになり、細胞は無制限に増えつづけてしまい、この無秩序に増えつづける細胞がガン細胞です。"と、説明されているようにガン細胞は他でもない自分自身の一部なのです。ただ、制御システムを失った細胞達なのです(私には訳があってグレてしまった子供達のようにも思えますが)。このような、細胞達を単純に私たちの"敵"と呼べるのでしょうか。そこにこそ、早期発見と排除方法(外科的切除が望ましいのですが)の難しさがあるわけなのです。
挿入 <図17> <図22>
出典:中村祐輔 著, 「遺伝子で診断する」, PHP新書から引用
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